高機能圧電薄膜の開発と弾性波デバイス応用に関する研究

suzuki

山梨大学 工学部 電気電子工学科担当

助教 鈴木 雅視  電子メール:masashis@yamanashi.ac.jp

ホームページ:https://uoy-suzuki-laboratory.blogspot.com/

 弾性波デバイスの主な産業応用先としては,移動端末用周波数フィルタ(特定の周波数をもつ送受信電波だけを取り出す)が挙げられます。現代社会の必需品である携帯電話・スマートフォンには,最大で10数個内蔵されており,1年間の生産数は数100億個に及び,情報通信を支える一つの柱となっています。また弾性波デバイスは他にもセンサ等様々な応用が提案されてます。
 弾性波デバイスには, Bulk Acoustic Wave (BAW) 薄膜共振子(図1(a))とSurface Acoustic Wave(SAW)共振子(図1(b))の2種類があり,用途や周波数帯によって使い分けがなされています。両デバイスとも圧電材料に交流電界を印可し,交流ひずみを発生させることで弾性波を励振させます。現在,デバイスには「電気的エネルギー⇔弾性波間の高い変換効率」,「高周波動作(高音速)」,「優れた温度安定性」等を両立することが求められています。これらの性能は,圧電材料がもつ「圧電性の大きさ」,「硬さ」,「材料の内部構造(結晶方向や分極方向)」,「薄膜を支える基板材料との組み合わせ」、「弾性波の振動方向」といった様々なファクターが作用し,決定されます。

 当研究室では弾性波デバイスのさらなる高機能化,応用範囲拡大を目指し,巨大な圧電性や特異な構造をもつ新たな高機能圧電薄膜の材料開発,シミュレーションによる弾性波デバイス設計,デバイス作製,評価を行っています。具体的な研究テーマは以下です。
・他元素ドーピングによるAlN圧電薄膜の高性能化(圧電性増幅(図2)や高音速化)
・圧電薄膜内の結晶方位・極性方向を自由に制御できる成膜法の開発(図3)
・他元素ドープAlN膜/高音速基板からなる層構造基板を用いたSAWデバイス開発
・分極反転他元素ドープAlN圧電膜を用いた振動発電デバイス