超伝導体を用いた高性能高周波デバイス
山梨大学 工学部 電気電子工学科担当
准教授 關谷 尚人 電子メール:nsekiya@yamanashi.ac.jp
ホームページ: http://www.ccn.yamanashi.ac.jp/~nsekiya/
超伝導体は高周波において銅などの金属と比べて抵抗が2~3桁ほど低いことが知られています.そのため,超伝導体を用いた高周波デバイスは従来技術では実現できない特徴(小型,高感度,高効率など)を実現することができます.
關谷研究室では必要な電波(周波数)だけを取り出すことができるフィルタに超伝導体を用いて高性能化を図っています.特に,宇宙からの微弱電波の受信にはますます発展する携帯電話や衛星通信などの電波によって混信や干渉を受けるため,微弱な電波だけを取り出すことができる超伝導フィルタの必要性が増しています.このような状況の中,關谷研究室で開発した超伝導フィルタはJAXA(宇宙航空研究開発機構)の深宇宙探査用新型アンテナの受信機に採用されることになりました(下図)(参考文献[1]).また,名古屋大学との共同研究で開発した超伝導フィルタは大気分析用受信機に採用され,南極昭和基地での観測に利用される予定です(下図)(参考文献[2]).
今後は,国立天文台などと共同研究を進めていく予定であり,超伝導フィルタで宇宙の謎の解明に貢献していきます.
参考文献
[1] 林拓麿,關谷尚人,大野剛「深宇宙探査用新型アンテナに向けたX帯超伝導フィルタの開発」応用物理学会, 20a-C207-1, 2019. 9/20 (北海道大学)
[2] 關谷尚人, 林拓麿,古瀬垣貴彦,中島拓 「超伝導フィルタによる多輝線同時観測受信機IF系の小型化の検討」日本天文学会春季年会, V124B, 2019. 3/14~17 (法政大学)
關谷研究室では,近年実用化が進んでいるワイレス電力伝送(WPT)に超伝導体を用いる新しい研究にも取り組んでいます.WPTは携帯電話や家電製品,電気自動車などに非接触で電力を供給する技術であり,電力を供給するためのコイルに低損失の超伝導体を用いれば,非常に効率よく電力を供給できるようになると考えられます.しかしながら,従来の超伝導ケーブルは高周波で低損失を実現することができませんでした.そこで,關谷研究室では高周波でも低損失を実現できる新しい高周波用超伝導ケーブルを開発しました(参考文献[3]).その超伝導ケーブルを使ってコイルを作ると非常に高いQ値(値が高いと損失が小さいことを意味します)を実現できることを実証しました(下図).今後はこの超伝導コイルをワイヤレス電力伝送に使用し,従来技術では実現できない,飛躍的な伝送効率の改善を目指します.この技術をさらに発展させ關谷研究室にしかできないワイヤレス電力伝送の応用を目指します.
参考文献
[3] N. Sekiya, Y. Monjugawa, “A novel REBCO wire structure that improves coil quality factor in MHz range and its effect on wireless power transfer systems,” IEEE Trans. Appl. Supercond. vol. 27, 6602005, 2017-6.
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