エネルギー、環境問題を解決する次世代パワー半導体の研究開発
山梨大学 工学部 電気電子工学科担当
教授 矢野 浩司 電子メール:yano@yamanashi.ac.jp
パワー半導体とは?
現代の我々の⾼度な⽇常⽣活において電⼒はもはや⽋かせないものになっています。電⼒には「直流」と「交流」があります。発電所から家庭、オフィス、⼯場などに送られる⼤部分の電⼒は交流ですが、これを家電、パソコン、モバイル端末、新幹線、ハイブリッドカーなど様々な機器の電⼒として使⽤するためには直流に変換する必要があります。「パワー半導体」は、この変換のための電気回路に搭載されているトランジスタ、ダイオードなどの電⼦部品であり、今や我々の⽇常⽣活を⽀えております。
今、なぜパワー半導体か
ゲームチェンジャーとしての次世代パワー半導体材料の出現と実⽤化
⽮野研究室のパワー半導体研究の取り組み
⽮野研究室では、新しい構造の⾼性能パワー半導体の研究開発に取り組んでいます。2000 年代始めから産業技術総合研究所と共同で炭化ケイ素を⽤いた静電誘導型のトランジスタの開発に着⼿し、2005 年にシリコンパワー半導体の10分の1の超低損失性能を実現しました。静電誘導トランジスタは図 4 に⽰されるようにストライプ状の p+埋め込みゲートの間を電⼦がソース電極からドレイン電極に輸送されることにより電流が流れます。この開発では炭化ケイ素材料が持つパワー半導体としての潜在能⼒の⾼さと、埋め込みゲート構造を微細化する技術を組み合わせることより上記のような性能が達成されました。2010 年には同トランジスタの限界性能(短絡耐量)を測定し、シリコンパワー半導体を上回ることを証明しています。2018 年には静電誘導型トランジスタとシリコントランジスタを組み合わせたカスコード型トランジスタを開発し、トランジスタ導通時の抵抗が約 35mΩという⾮常に低い電⼒ロスを実現しています。
本研究に関連する主な研究業績
[1] K. Yano, M. Mitsui, H. Moroshima, J.-I. Morita, M. Kasuga, A. Shimizu, “Rectifier characteristics based on bipolar-mode SIT operation,” IEEE Electron Device Letters, Vol.15, No.9, pp.321-323, 1994. DOI: 10.1109/55.311121
[2] ”パワートランジスタ:電⼒損失 1/10 に” ⽇経産業新聞 2005 年 3 ⽉ 30 ⽇
[3] K. Yano, Y. Tanaka, T. Yatsuo, A. Takatsuka, and K. Arai, “Short-circuit capability of SiC buried-gate static induction transistors: basic mechanism and impacts of channel width on short-circuit performance,” IEEE Trans. Electron Devices, Vol. 57, No. 4, pp.919-927, 2010. DOI: 10.1109/TED.2010.2040665
[4] K. Yano, Y. Tanaka, and M. Yamamoto, “Extremely low ON-resistance SiC cascode configuration using buried gate static induction transistor,” IEEE Electron Device Letters, Vol.39, No.9, pp.1892-1895, 2018. DOI: 10.1109/LED.2018.2878933
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